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 第76回 猫まねき



109キーボードはなぜ使いにくいのか

Windows標準の(というよりは、日本語仕様AT互換機標準の)キーボードは109キーボードといいます。この前身は106キーボードといい、現在の109キーボードの最下段からWindowsキー2個、アプリケーションキー1個がない合計106個のキー配列でした。
109キーボードはWindows 95の登場と同時に作られましたが、このWindowsキー、アプリケーションキーを活用している人がどれだけいるでしょうか?
他にも「使わないキー」はたくさんあります。
例えば、スペースバーの右横の「変換」というキー。このキーを漢字変換キーとして使っている日本語IME(日本語入力ソフト)はほとんどないと思います。「変換」は頻繁に押さなければならないキーなので、こんなところに小さくあっても、押しにくくて仕方がないからです。 この位置に「変換(XFER)」というキーを設けたのは、NECのPC98シリーズだそうですが、使いづらいため、後から開発された日本語IME(当時はIMEとは呼ばず、FEP=フェップ、と呼んでいました)は、このキーを無視して、より押しやすいスペースバーに「変換」の機能を受け持たせました。ということは、もともと「変換」というこのキーはいらなかったのでは?

かつて「DOS-V」と呼ばれたIBM PC-AT互換機(現在「Windowsマシン」と呼ばれているもの)の日本仕様マシンには、日本語106キーボードというものがついていました。これは同社の英語版マシンについている101キーボードに日本語のためのキーを5つ追加したもので、現在主流となっている日本語キーボードは、この106キーボードが基本になっています。
106キーボードの最下段の列は、今よりはずっとすっきりしていました。Windows 95の登場と共に、ここに3つのキーが追加されて、「109キーボード」となりました。追加されたキーはいずれもWindowsを操作するためのキーで、「Windowsキー」というものが左右にひとつずつ、他に「アプリケーションキー」と呼ばれるものが1つ。
この3つのキー、なんのためにあるのでしょう?
Windowsキーというのは、AltキーやSHIFTキー同様、左右についています。それほど重要なキーなのでしょうか? 押してみれば、なんのことはない、「スタートメニュー」が現れるだけですね。
「スタートメニューはどういうとき使いますか?」「Windowsを終了させるときです」……という有名なジョークがありますが、実際、私はこのスタートメニューというものを、Windowsを終了するとき以外には、使うことも見ることもありません。そんな意味のないもののために、重要な最下段のスペースに2つもキーを入れてしまっているわけです。

さて、愚痴はこのへんにして、現在の標準的109キーボードにおいて、どのキーが頻繁に押されているのか、どのキーが不要なのかを冷静に見直してみましょう。
日本語を入力する場合、CapsLockというキーはそれほど使いませんね。また、このキーは欧文タイプライターのキーレイアウトを引き継いだため、Shiftキーを押しながらでないと有効になりませんが、いちいちShiftを押さなくともON/OFFできたほうが楽です。
最下段のキーでは、Windowsキー、アプリケーションキーといった追加された3つのキーは不要でしょう。Altキー(特に右側の)も、それほど頻繁には押さないのではないでしょうか。
逆に、Ctrlキー、BackSpaceキー、Deleteキー、Homeキー、Endキーなどはかなり頻繁に使います。
「コピー」のCtrl+Cや「貼り付け」のCtrl+Vなどはよく行う作業ですが、Ctrlキーが左下隅にあると、左の小指では押しにくいんですね。CtrlキーがAの左隣(CapsLockの位置)にあれば、左小指をちょっと伸ばすだけで押せます。

IMEをON/OFFするキーも、押しやすい位置にないと困ります。最近のIMEは「変換」キーでONになるようにしてあるものが多いようですが、当初は「Alt+半角/全角キー」という、とんでもなく理不尽な組み合わせがIMEのON/OFFに使われていました(今ももちろんこの組み合わせはどんなIMEにもデフォルトで有効になっています)。
デスクトップ機の場合、キーボードは付け替えられるので、気に入らないキーボードは捨てて、好きなタッチ、レイアウトのキーボードを使うことができます。しかし、ノートパソコンの場合はそうもいきません。しかも、キーの数が少ないノートパソコンでは、HomeやEndといったキーが補助キーとの組み合わせでないと有効にならないものも多いのでやっかいです。
まず使うことのないWindowsキーなどが割り当てられているのに、これはあんまりというものでしょう。Windowsキーやアプリケーションキーを、HomeやEndキーにしてしまうことで、操作性がぐんと上がります。

「猫まねき」を使う

キーボードレイアウトを変更するユーティリティソフトとしては、「Alt-IME」や「秀CAPS」といったものが有名で、歴史も古いのですが、CapsLockキーと左Ctrlキーを入れ替えたりするだけのシンプルなソフトです。
Windowsキーなども含めて大幅に変更したい場合は、もっと本格的なキーボードレイアウト変更ソフトが必要になります。
有名なのは「KEYLAY」と「猫まねき」の2つでしょうか。この2つのソフトはシェアウェアでしたが、今では「猫まねき」はありがたいことにフリーソフトになっています。
「猫まねき」では、あらゆるキーを入れ替えることが可能です。
下の画像は、「猫まねき」のキー配列変更設定画面です。私は左CtrlとCapsLockキーを入れ替えているほか、使わないWindowsキー、アプリケーションキーは、PageupやPagedown、Endといったよく使うキーとして機能するように設定しています。
この他、左上の「半角/全角」キーをESCキーにしたり、DeleteとInsertを入れ替えたりといったキー変更も一般にはよく行われます。
猫まねき設定画面
猫まねきを使えば、CtrlやShiftキー、あるいはWindowsキーとの組み合わせによるキー定義もできます。また、アプリケーション別にキー定義を複数設定できるので、特定のソフトを使っているときだけ有効なキー操作なども指定できます。
キーの変更はその人の好みがあるでしょうし、あまりに変更してしまうと、他のパソコンを触ったときにすっかり調子が狂うという弊害もあります。しかし、無理な指使いをして腱鞘炎を起こすよりは、少しでも運指運動学?的に理にかなったレイアウトに変更し、ストレスを下げたほうが賢いのではないでしょうか。
それにしても、本来、きちんと煮詰められたキーボードを設計しておけば、こんなユーティリティソフトは不要なはずなのに……と思うと、本当に悔しいやら腹立たしいやらですねえ。
(以上、拙著『パソコンは買ったまま使うな!』より引用)
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