タヌパック短信 35

石鹸生活の勧め(2)



 前回は、無添加固形石鹸は、化粧石鹸の売場ではなく、台所用洗剤の棚の隅にあるという話をしました。
 その後、玉の肌石鹸の「白いふきん洗い」(台所用固形石鹸)には、微量ながらエデト酸塩が添加されているという情報を得ました。直接メーカーに問い合わせた人がいて、インターネットで報告していました。
 今回は洗濯用粉石鹸の話をします。

◆洗濯は中空加工の粉石鹸で


 手洗いや食器洗い、入浴用に無添加固形石鹸を使うのは簡単ですし、それほど抵抗もありません。でも、多くの人は、洗濯に粉石鹸を使うことに抵抗を覚えているようです。
「ダマができて溶けにくい」「石鹸カスが排水を詰まらせる」「高くて不経済」などなどがその理由ですが、多くは誤解に基づくものです。
 まず「粉石鹸は溶けにくく、詰まりやすい」というのは、ある程度は本当です。全自動洗濯機や食器洗い機というものが合成洗剤と相性がいいのは否定できません。でも、粉石鹸も、技術改良でかなり使いやすくなりました。
 現在の洗濯用粉石鹸の多くは、中空加工と言って、粉子の中が空洞になっています。これにより、昔の粉石鹸よりはるかに溶けやすくなっています。
 また、洗濯物を入れる前に、粉石鹸だけを入れた状態で数十秒洗濯機を空回しするだけで、あっと言う間に石鹸が溶けて使いやすくなります。
 冷水では溶けにくいから風呂の上がり湯を使うとか、予洗いをしてから石鹸を入れたほうがいいというような話もよく聞きますが、我が家ではそんな面倒なことは一切していません。真冬でも、冷水で洗います。洗濯物を入れる前に空回しすれば、どんなに水温が低くてもきれいに溶けます。
 欧米で粉石鹸が今ひとつ人気がないのは、硬水地域が多いからということもあるようです。しかし、さいわい日本ではほとんどが軟水地域で、石鹸が溶けないような硬質の水というのはほとんどお目にかかりません。
 新潟の仕事場は町営水道で、地下伏流水から取水しているそうですが、まったく問題なく粉石鹸が溶けます。
 ところで、ほとんどの洗濯用粉石鹸には助剤として炭酸塩なるものが添加されています。僕が知る限りでは、これを添加していない完全な洗濯用無添加粉石鹸は、シャボン玉石鹸とオカモト(コンドームで有名な)からしか出ていません。オカモトの石鹸製品は、シャボン玉石鹸が製造元になっているようですから、事実上は一社からしか出ていないのかもしれません。
 炭酸塩は、石鹸を溶けやすくする助剤として添加されるのですが、軟水地域が多い日本ではほぼ無用のものです。
 ただ、無添加粉石鹸はかなり高価ですし、どこでも売っているというものでもありません。まずは、炭酸塩入りであっても、粉石鹸を使った洗濯に切り替えていけばいいと思います。
 粉石鹸は石鹸カスが生じて全自動洗濯機や排水パイプを詰まらせるという話もよく聞きます。我が家では一度も経験がないのですが、やはりやり方の問題か、中空加工していない、昔ながらの粉石鹸を使っているのではないかと思います。
 最後に、粉石鹸は合成洗剤より高いという論について。
「環境を汚すから合成洗剤は駄目だと言うけれど、貧乏人には十円でも安いほうがいい。環境のことを考えるのは、金持ちからにしてくれ」と言う人がいますが、その「十円の差」で、アトピーなどに悩まされ、医療費を払っていたのでは、結局高いものにつきます。
 粉石鹸と合成洗剤の微々たる値段差を、健康を損ねる危険性と比較するのは馬鹿げています。

◆粉石鹸攻撃キャンペーンの嘘


 最近、合成洗剤メーカーは「石鹸が必ずしも環境に優しいわけではない」というキャンペーンを張るようになりました。これは原発の「二酸化炭素を出さないから地球に優しい」キャンペーンと非常によく似ています。検証していけばでたらめな論理の積み重ねなのに、学者や役所を抱え込んでPRすることで信憑性を持たせようとしているところもまったく同じです。
 まず、石鹸排水は合成洗剤の排水よりもBOD(生物化学的酸素要求量)の値が悪いという攻撃があります。
 BODは微生物が有機物を分解する目安として使われますが、合成洗剤のような毒物は、そもそもその微生物を殺してしまうわけですから、BOD値が低いのは当たり前です。むしろ石鹸排水のBOD値が高いのは、微生物がせっせと分解している証拠で、石鹸の優秀さを裏付けているとも言えます。
 次に、石鹸カス(金属石鹸)がヘドロになるから環境負荷が高いという論。
 石鹸カスができるということは、裏を返せば、石鹸は環境に出れば界面活性を失うということです。逆に合成洗剤はいつまでも分解されず、水に「溶けた」状態で界面活性を保つので、下流に行っても泡を立てています。
 石鹸カスそのものは無害で、微生物の餌になり、分解されます。河川に石鹸カスがたまっていくのは、本来それを分解すべき水棲生物が棲めない環境にしてしまったことに原因があります。つまり、三面コンクリート張りの河岸工事や、毒物である合成洗剤垂れ流しこそが責められるべきです。
 最近では生協の元締めさえもこうした暴論を平気で説き、合成洗剤を売ることの正当性を主張しているようですが、とんでもない堕落です。
 次回はシャンプーの話をします。 
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