タヌパック短信 5

●税金で子供たちを洗脳するな!

 最近はあまりにふざけたことばかりが多く、新聞記事にいちいち腹を立てることは少なくなったのですが、九月二八日付朝日新聞の社会面に載っていた「教材ゲームは原発がお好き」という記事には、本当に脳が沸騰しそうになりました。
 一応内容をまとめておきます。

[文部省・通産省共管の財団法人コンピュータ教育開発センターが、今春より全国の市町村教育委員会や希望する中学・高校に「エネルギー・環境教育用パソコンソフト」なるものを無料配布している。『未来(みく)の選択』と題したゲーム仕立てで、荒廃した島にタイムスリップした子供たちが、資源問題・環境問題に配慮しながら島を開発、発展させていくという一種のシミュレーション・ゲーム。
 このゲームではエネルギーとして原子力発電を選択すると、安くて大きな電力が得られ、大気汚染などの環境問題も起きず、ゲームはトントン拍子に進んでいく。火力や水力を選ぶと、十分に発展できず、さらには農業重視型の開発を選ぶと、住民から「寂しいな」という手紙が届くという細かい芸まで折り込んでいるらしい。
 廃棄物処理や事故の可能性などの原発のマイナス面は一切出てこないから、先入観のない生徒が真面目にこのゲームをやればやるほど「原子力発電がいちばんだ」と思い込む結果になる]

 このゲームを作らせたのは通産省です。こうした悪質な洗脳が、我々の税金で行われているのです。電力会社の原発PRが電気料金で行われているのも噴飯ものですが、税金を使って子供をパソコンゲームで洗脳しようという根性は、ある意味では、開き直っているフランスの核実験強行よりタチが悪いと言えるでしょう。
 さらに憂鬱になったのは、こうした事態が、ゲームソフト無料配布開始から半年も経ってから報道されたことです。この犯罪行為の悪質さ、重大さは、国が税金を使って子供たちをマインドコントロールしているという点でオウム事件以上の重大犯罪だと思うのですが、マスコミは真剣に追及する気配がありません。
 それどころか、この記事の見出しは、一三版から一四版への間に大きく変えられていたことが分かりました。一三版の見出しは、「安全で安い原発 ゲームで“洗脳”」となっていたようです。この見出しを「教材ゲームは原発がお好き」に変えさせた新聞社の上層部には、明らかに「洗脳」という言葉を避けたかったという意識が窺えます。しかし、「洗脳」という言葉こそこのニュースの本質ではないですか。
 ゲームで洗脳という話をパソコンネットでしていたら、他にもいろいろな情報が寄せられました。
 都市開発シミュレーションゲームの元祖的大ヒット作「シムシティ2000」では、原子力発電を選ぶと、「建設費用が高くそれほど効率的でない」「メルトダウン災害の危険性がある」などのマイナス要素がきちんとゲームに反映され、万一メルトダウンさせると、場合によってはゲームオーバーになるそうです。ちなみに石炭、石油発電などは公害をまき散らし、マイクロ波、核融合発電にはとんでもない費用がかかるという設定のようです。
 これに対して、類似版の「シムアース」は、仮想惑星の上に生態系を築き上げていくという同様のシミュレーションゲームですが、ゲームが進んで文明が発展していくと、やはりエネルギー政策がゲームの成否を決定する重要なポイントになります。手引き書にはこんなことが書かれているそうです。「公害は燃料使用が原因の他に、産業時代の技術によっても起こります。もっとも効果的な解決策は科学の分野にエネルギーを配分して、できるだけ早く原子力(ATOMIC)時代に発展することでしょう」
 恐らく今回のゲームの開発も、こうした既成製品にヒントを得たものでしょう。しかし、こうした犯罪に対抗する手段はないものなのでしょうか?。


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